この記事では次の情報をまとめています。
・生活道路の定義
・生活道路の見分け方3選
・主要国と比較した日本の道路事情
2026年9月から生活道路など幅が狭い道路の制限速度を
時速30㎞に引き下げる改正道交法が施行されます。
今のうちに生活道路について知っておきましょう。
生活道路の定義
生活道路の明確な定義と法令
実は生活道路に関する法令や明確な定義はありません。
しかし、交通関係機関・警察庁・国土交通省・国語辞典では、それぞれが定義づけをしています。
各関係機関の定義は次の通りです。
発行元 | 記載されている定義 |
---|---|
交通関係機関 | 地区に住む人が地区内の移動あるいは地区から幹線道路に出るまでに利用する道路 |
警察庁 | 主として地域住民の日常生活に利用される道路 自動車の通行よりも歩行者・自転車の安全確保が優先されるべき道路 |
国語辞典 | 幹線道路(主に国道や県道)の対義語 住宅街や商店街へのアクセス道路として供用される道路 地域住民が日常生活で利用する道路 |
国土交通省 | 幅員5.5m未満道路 |
またウィキペディアでも以下のように書かれています。
生活道路(せいかつどうろ)とは、その地域に生活する人が、住宅などから主要な道路に出るまでに利用する道のこと。
引用:「生活道路」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』最終更新 2024年5月30日 (木) 15:12
つまり生活道路の定義とは
「地域住民が日常生活に利用する道路であり歩行者・自転車の安全が優先される道幅5.5m未満の道路」ということになります。
生活道路の定義からわかること
生活道路が法令上の明確な定義がないことの背景には「道幅の狭い道路の多さ」があるのではないでしょうか。
生活道路といわれる道路の特徴として
- 道幅が狭い
- 見通しが悪い
- 信号や横断歩道がない
- 歩道がない
などがあげられます。
私が住んでいる地域は田舎なので上記のような特徴の道路ばかりです。都市部だったとしても、同じような特徴の道路はいたるところに存在します。
日本の公道は高速道路を除けば120万キロ程あり、道幅が5.5m未満の狭い道路は約87万キロと日本の公道の70%以上になります。
どんな道路でも、当然その地域の住民が利用するでしょう。そして道幅5.5m未満の狭い道路が日本の全体の7割を超える。言い換えれば日本の道路のほとんどが「生活道路」なんです。
つまり今までの法令では生活道路か生活道路ではないか判別はなく、等しく「一般的な道路」でしかなかったので道路と生活道路を明確に分ける法令上の定義はなかったということでしょう。
【覚えておきたい!】生活道路の見分け方3選!
生活道路の簡単な見分け方①:ゾーン30で見分ける
一番わかりやすいのはゾーン30の標識です。
生活道路における歩行者や自転車の安全な通行を確保することを目的とした交通安全対策の一つです。
区域(ゾーン)を定めて時速30キロの速度規制を実施するとともに、その他の安全対策を必要に応じて組み合わせ、ゾーン内におけるクルマの走行速度や通り抜けを抑制します。
引用:警視庁ホームページ
ゾーン30は警視庁などが「生活道路」を対象にした取り組みの1つなので、この標識がある区域は間違いなく「生活道路」です。
生活道路の簡単な見分け方②:道路の幅員で見分ける
- 左寄りを走行していても明らかに道幅の半分以上である場合
- 対向車と十分な余裕をもってすれ違いできない場合
それは生活道路です。
車種によって車幅は様々ですが一般車両の場合、上図のような状況であればどの車種であっても生活道路だと言えるでしょう。
一般車両(大型トラックなどを除く)の車幅は次の通り定められています。
車両種別 | 車幅 |
---|---|
軽自動車 | 1,480㎜以下 |
小型自動車 | 1,700㎜以下 |
普通自動車 | 小型自動車より大きいもの |
車幅にはサイドミラーなどは含まないので、メーカー公表の値や車検証記載の車幅より実寸は大きくなる。※標準的なサイドミラーはおよそ100~200㎜ですので小型自動車でも2000㎜近くになる。
道路構造令では、車両のすれ違いを考慮した道幅の最小値を2.75メートルとしています。そのため、すれ違い可能な車道の幅は5.5メートル以上必要であると解釈されます。
つまりすれ違いができない道幅は5.5m未満。
地域住民が生活に利用する道路で幅が5.5m未満の道路は「生活道路」となります。
生活道路の簡単な見分け方③:路側帯の有無で見分ける
路側帯が無い狭い道路の場合、生活道路でしょう。
歩道がない道路又は道路の歩道がない側に設置され、車道と分離することにより基本的に歩道と同様に扱われる。
引用:「路側帯」ウィキペディア フリー百科事典日本語版 最終更新 2024年3月12日 (火) 15:53
住宅街などの狭い道路では歩道がないため路側帯が設置されていることが多い。路側帯は原則0.75m以上とされています。
ですが、車道の幅は道路構造令では、最低でも2.75mとなっています。もし両側に路側帯がある場合。
路側帯幅0.75m×2=1.5mこれに最低車道幅2.75mを足すと4.25mとなり4.25m以上の道路でないと路側帯を設置した場合、車の通行ができなくなります。
つまり住宅街などの狭い道路で路側帯の設置されていない道路は4.25m以下である可能性が極めて高くなります。
要するに歩道のない狭い道路で路側帯がない場合は「生活道路」であるといえるでしょう。
生活道路の簡単な見分け方からわかること
住宅街は生活道路。
「地域住民が日常生活に利用する道路であり歩行者・自転車の安全が優先される道幅5.5m未満の道路」という定義に当てはめれば
日本は幅5.5m未満の狭い道路が全体の7割を超えます。そして「道路」というもの自体、当然地域住民は利用します。
車両専用道路でもない限り、歩行者・自転車の安全が優先されます。
つまりセンターラインのない住宅街の道路であれば、例外を除いたほぼ全ての道路が「生活道路」といっても間違いはないのでしょうか。
補足:日本には道路が多すぎる
主要国と比較
日本の道路の長さは地球を30周以上できるほど長い。世界でも6位の長さ。
主要7か国との比較を面積順に並べたものが次の表です。
国 | 面積 | 道路延長 | 道路密度 |
---|---|---|---|
カナダ | 998万㎢ | 140万㎞ | 0.14 |
アメリカ | 983万㎢ | 658万㎞ | 0.66 |
フランス | 55万㎢ | 95万㎞ | 1.72 |
日本 | 37万㎢ | 120万㎞ | 3.24 |
ドイツ | 35万㎢ | 64万㎞ | 1.82 |
イタリア | 30万㎢ | 48万㎞ | 1.60 |
イギリス | 24万㎢ | 42万㎞ | 1.75 |
主要7か国の中で日本と面積の近い国との比較がこちら。
上の表では道路密度、下のグラフでは道路延長を見れば日本がどれほど面積に対して道路が多いのかがわかります。
さらにイタリア・イギリスの道路より日本の道幅が5.5m未満の狭い道路約87万㎞だけでも約2倍になります。
主要国と比較してわかること
主要各国と比較してみると、日本には道路が多い。
この背景には1970年代の政府による「日本列島改造論」という地域振興政策があるといわれており、過剰な道路整備や建設が現在も続けられているとされています。
1970年代の政策については様々な意見や考察などがありますので、それぞれを肯定も否定もしません。
ですが、いたるところで道路工事が行われていたり交通量の少な過ぎる高速道路などが存在するのは生活の中で感じる事実でしょう。
人口10万人当たりの死者数は3.1人(2019年)で国際道路交通事故データベースがデータを持つ30か国中7位と上位になっています。
良いか悪いかは別として、日本には道路が多い。道路が多ければ、それだけ交通事故の危険も多くなるでしょう。なかでも特に住宅街などでは気をつけたいですね。
まとめ
「生活道路」には明確な定義はありませんが、各関係機関がそれぞれに定義する内容をまとめると、
生活道路とは「地域住民が日常生活に利用し、歩行者・自転車の安全が優先される道幅5.5m未満の道路」です。
- 道幅が狭い
- 見通しが悪い
- 信号や横断歩道がない
- 歩道が無い
- 地域の道路は地域の住民が利用する。
- 日本全体の7割を超える道路が道幅5.5m未満。
- 例外を除けば交通弱者の安全は優先される。
要するに日本の公道のほとんどが「生活道路」といえる。
「生活道路」の簡単な見分け方は3つある。
- ゾーン30の標識があるかどうか
- 十分な余裕をもって離合できるかどうか
- 路側帯の有無
住宅街を走行する際はほとんどの場合が生活道路だと思っても間違いはないということがお分かりいただけるかと思います。
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